インターネット広告の今後
(株)オプト 代表取締役COO 海老根 智仁氏

1.インターネット広告市場

 現在のインターネット利用者は、約6,700万人。2002年2月時点では、約4,600万人だった。また、利用時間では、2004年6月時点での月平均利用時間は約15時間20分と、2000年時点の月平均時間8時間から、この4年間で倍近くにもなっている。なお、家庭におけるブロードバンド環境の比率は約80%だ。
 これはエンドユーザーの動きであるが、企業利用ではどのような変化があるのだろうか。弊社では、アメリカのEマーケティング市場データから予測し、2008年には約4200億円規模の市場にまで成長すると見込んでいる。昨年2004年に日本のネット広告市場は、ラジオ広告市場を抜き、1,814億円となったが、4,000億円市場と言われる雑誌広告市場に追いつくのも時間の問題である。
 一方、モバイル広告を見てみると、現在の携帯電話の契約台数は約9000万台。日本の人口の80%が携帯電話を所有している。これだけの契約台数があって、携帯広告の使用はどうなっているのだろうか。2004年5月27日の日経新聞に掲載されたデータを参考にすると携帯の広告市場は、まだ電子商取引やコンテンツの市場には追いついていない。ネット広告の市場が1,814億円であるのに対し、携帯広告市場は約200億円ではあるが、いずれにしてもネット広告同様急激に伸びるだろう。
 海外の動向を見てみると、ヨーロッパにおけるインターネット利用は総メディア視聴時間の6%を占めている。アメリカでは、世代別に見ると13歳と24歳のインターネットの利用時間がテレビを上回った。アメリカと比較すると日本とアメリカのネット広告の使用の比率は、アメリカが15%であり、2003年度のネット広告が8,000億円であるのに対し、日本は1,183億円である。もうひとつの比較として、マスメディア全体の占めるネット広告の割合である。アメリカはマスメディア全体の中でインターネット広告は、5.7%なのに対し、日本は2.1%である。こうして見ると日本でもネット広告の成長が目覚しいが、海外と比べると、さらに飛躍する可能性を感じる。

2.インターネットマーケティングとインターネット広告

 「インターネットマーケティング」の領域は包括的かつ多岐にわたっているため、明確に定義をされているものは少ない。専門家によると以下のように言われている。
@ 博報堂によると、インターネットマーケティングとはある領域を指すのではなく、「インターネットというメディアが関わるマーケティング活動すべて」と定義した。(2000年)
A 村本理恵子氏によると、インターネットマーケティングとは、狭義では、ウェブサイトをどう立ち上げるか、どうユーザーを誘導するか、という視点に絞られる。(2001年)
B 荒木浩二氏は、インターネットマーケティングの活用例として、WEB構築活動、インターネットを活用した市場調査、インターネット広告による集客活動、HPの機能拡充やEメールによる顧客フォローによって実現する販売活動、などを挙げている。また、荒木氏は、「インターネットによるマーケティングとして、ホームページで会社を紹介したり広告を出稿したりする「案内」「告知」に留まらず、見込み客獲得や実際の取引に活用されるケースが増えている」と言っている。

 最後に、(社)日本マーケティング協会監修『インターネットマーケティング』では、インターネットマーケティングを狭義のマーケティング活動から発想している。
 まずひとつめに、ターゲットを明確化したあとに、「いかに商品力を高めるか」、続いて「いかにして商品の販売チャネルを構築するか」、最後に「いかにして顧客に商品を認知・理解させるか」また、「WEBのアクセシビリティを高めるか?」という3つの視点でインターネットマーケティングをまとめている。

3.インターネット広告の基本分類

 JIAAによるとインターネット広告は、ウェブ広告、メール広告、ストリーミング広告、モバイル広告の4つに分けられる。ストリーミング広告とは、広告画像ファイルをダウンロードさせて表示させるのではなく、ストリーミング技術を使って広告スペースに動画を再生させる広告手法のことである。
 ウェブ広告とメール広告の特性を比較してみると、随分異なる点がある。ウェブ広告に関しては、ある一定期間での商品認知などを挙げるような手段などに適している。つまり、@プル型(必要な情報をユーザーが能動的に取得する情報サービス)である Aユーザーをセグメントするアプローチが難しい。B視覚に訴える。(バナー広告など)C媒体コンテンツへの依存度が高い。
次にメール広告については、短期間に効果的な集客などをおこなう場合に適する。@プッシュ型(ユーザーが能動的に情報を取得するのではなく、発信者がユーザーに半強制的に情報をブラウズさせるタイプの情報サービス)である。つまりネットユーザーの行動に依存しない。Aユーザーを特定したアプローチができる。(DMなど)Bテキストのためユーザーに対して説得性が増す。以上がウェブ広告とメール広告の違いになる。
 さらに、ウェブ広告については、規格が決まっている定型のものと、定形外のものとがあり、定型のものとは、バナー広告、バッジ広告、レクタングル広告、スカイスクレーパ広告である。定形外は、フローティング広告、エキスパンド広告、ポップアップ広告、フルスクリーン広告、テキスト広告、スポンサーシップ広告がある。
 バナー広告とは長方形の旗型広告で、このバナーには広告主のWebページにリンクが張られており、ユーザーがクリックすればジャンプする仕組みになっている。バッチ広告は、広告主の目的に合わせWebサイト内の任意の場所にスポンサー名やロゴを表示させる広告。また、WEBページにアクセスしたときや、ページから移動するときなどに自動的にウィンドウが立ち上がり表示されるのがポップアップ広告である。スポンサーシップ広告とは、媒体サイトのコンテンツと連動させた広告手法であり、サイト内の特定コンテンツページやコーナーを広告主が提供している広告である。
 つぎにメール広告である。インターネットの電子メール機能を使って、テキストや画像で表現される広告を配信するもので、主にメールマガジン内に広告文が挿入される「メールマガジン型」と全文が広告となっている「ダイレクトメール型」のふたつに分類される。さらにダイレクトメール型広告は、事前に希望する情報カテゴリーのメールを受け取ることを許諾したネットユーザーに対して配信されるオプトインメールと、広告の配信を事前了承したユーザーのメーリングリストからユーザー属性のセグメント項目で配信対象者を絞り込むターゲティングメール広告の二種類にわけられる。
 モバイル広告は、メール広告、ピクチャー広告、タイアップ型広告の三つに分けられる。メール広告はメールマガジン内に広告を挿入し訴求する広告。ピクチャー広告は、サイト上に画像およびテキストで広告を表示したもので、タイアップ型広告では、媒体に商品告知ページやキャンペーンページなどを作成し、独自の広告展開が可能である。
最近弊社においては、空メールシステムやQRコードを使って、クロスメディア、つまりマスと連動させるというケースが増えている。

4.インターネット広告の今後

 インターネット広告には、@認知度向上効果 A消費者誘導効果 B消費者獲得効果 の3つの効果がある。インターネット広告は企業によって使用されるものであるから、その企業の目的や考え方によって、形態は異なってくる。クライアントによって、この3つの効果を均等に重視している企業もあれば、認知度向上効果だけを求める企業もある。または、最終的に1人のエンドユーザーがいくらで獲得できるのかという消費者獲得効果だけを期待している企業もあるわけである。このように企業によって、まったく発展形態が異なるという点にご注意いただきたい。
 ここまでは弊社が考える広告効果であるが、宣伝会議から出版されている『インターネット広告革命』という本の中でも同様に、インターネット広告の3つの効果について言及している。@インプレッション効果 Aトラフィック効果 Bレスポンス効果 の3つにわけている。インプレッション効果というのは、広告を表示して、ユーザーが視聴した段階で得られる効果、つまり認知度向上効果である。トラフィック効果とは、本の中で「ユーザーの誘導効果」と定義している。つまりHPに入ってくる人数を指標とするということである。トラフィック効果にはポストクリックと、ポストインプレッションを含めている。ポストクリックとは、広告をクリックしてHPに入ってくる効果。ポストインプレッションというのは、ユーザーがその時にはバナー広告をクリックしなかったが、後日、企業サイトを訪問した場合や、もしくは、記憶していたURLを自分で入力して入ってくるということだ。これも誘導効果(HPに入ったどうかの指標)に含めるということである。最後にレスポンス効果とは、消費者獲得効果のことである。


効用の実態
〜新聞・雑誌・インターネットのリーチ比較〜


新聞閲読率(中央紙・朝刊)
1 読売新聞 27.7%
2 朝日新聞 27.0%
3 日本経済新聞 8.7%
4 毎日新聞 4.1%
5 産経新聞 3.0%
雑誌閲読率
1 週刊少年ジャンプ 10.6%
2 週刊少年マガジン 9.4%
3 週刊文春 7.5%
4 女性自身 6.7%
5 FRIDAY 6.3%
5 オレンジページ 6.3%
インターネット閲読率
1 Yahoo! Japan(ヤフー ジャパン) 36.7%
2 Google(グーグル) 14.2%
3 goo(グー) 6.6%
4 MSN Japan(エムエスエヌジャパン) 6.3%
5 NIKKEI NET(ニッケイ ネット) 5.2%

※ビデオリサーチ[MCR] (2004年 東京30q圏)
「インターネット広告革命」2005.5(宣伝会議)

(1)広告メニューの分化と今後

 今後、インターネット広告は、企業にとって認知という広告効果をもたらすブランド広告と消費者獲得という効果をもたらすレスポンス広告に二分していくだろう。広告主である企業が求める目的によって、ブランド広告とレスポンス広告を使い分ければよいのである。
 しかし最近の事例を見ていると、ブランド広告とレスポンス広告の中間のものが出現し、企業目的にあわせて、よりセグメントされたターゲットに到達し、かつレスポンスももたらすという広告も出始めている。


(2)今後のインターネット広告〜事例集〜

 アメリカのネット広告市場の種類別推移から現在流行っている広告を見てみよう。2002年と2003年で比較をすると、市場として大きいキーワードサーチ(Keyword Search)は1年間で261億から840億円と3倍以上伸びている。クラシファイド広告(Classifieds)が261億円から408億円の成長がみられる。
 E−MAIL広告の市場は、日本においては根強い人気があるが、アメリカでは1%しか市場がない。2002年度には4%、2003年度では3%、2004年度では1%と、徐々に減少している。
 これから流行りそうなものを紹介しておくと、アメリカではキーワード広告として1年間で3倍にもなっている広告が、検索リスティング広告である。検索リスティング広告とはユーザーが検索エンジンで検索を行い、その検索結果が広告になっているというものである。
日本においては、これを提供している大手企業は2社あり、オーバーチュアとグーグルである。これは引き続きレスポンス広告として成長をするだろう。
 つづいて、アメリカの市場においては約20%の市場である、クラシファイド広告であるが、クラシファイド広告とは、特定分野における情報一覧形式の広告である。日本においてはまだほとんど始まっていないが、アメリカでは、もともと地方新聞などがローカルな媒体に一般消費者が「売ります買います」のような広告を載せるというカルチャーがあり、それがネットに移行したものである。主にC to Cの利用が中心で、基本的に掲載料は無料である。一方B to Cが中心の有料クラシファイド広告マーケットは、現在「検索」の40%、「バナー」の19%に次ぎ、18%で第3位である。2002年〜2004年で15%、17%、18%と順調に成長している。
 クラシファイド広告は「情報=広告」であり、情報を提供して、かつ情報提供企業が、広告費を支払うというものである。これはクリックすると資料請求ページに飛んだりするので、レスポンス効果を追及した広告となっている。
 ちなみにアメリカにおいてはクラシファイド広告は、ひとつの広告費が非常に安価であるため、広告代理店などを通さず、媒体と広告主が直接おこなっている場合が多い。
 アメリカにおけるクラシファイド広告で有名な会社の1つにライブディールという会社がある。

<行動型ターゲティング>

 リスティング広告とクラシファイド広告の次には、新しい形態として行動型ターゲティング(BTツール=ビヘイビアターゲティングツール)というものがある。
 各ユーザーがどんなニュースカテゴリーに興味を持って、どのくらいの頻度で特定の記事を読んでいるかという行動履歴をクッキー(Cookie)で読みとり、情報を蓄積しておき、次に検索サイトを訪れると、前回検索したもの、すなわち、そのユーザーが興味を持っていると思われる商品の広告がポップアップで出てきたり、探し終わってサイトを閉じると、広告が隠れていたりする。
 ダブルクリックという会社が既に日本でこのサービスを開始している。

<RSS広告>

 RSS(Rich Site Summary)広告を日本で始めている会社にネットエイジとシーネットという会社がある。RSSとは、個々のニュースサイトにアクセスしなくても最新の見出しを一覧できるというもの。さまざまなサイトに提示されたニュースを集めて、それがどこかに掲載されているかという情報をまとめた小さなファイルのことである。そこに興味のあるニュースサイトやブログを登録すると最新情報をメールと同じように既読、未読の管理をしたり、フォルダ分けやキーワード分類などさまざまな機能をつかって、より便利に読むことができる。ユーザーがRSSリーダーに興味のある事柄を登録しておくと、その登録内容と関連した広告が画面上に現れるのである。これはどちらかというとターゲティングを意識したレスポンス広告と言えよう。

<リッチメディア広告>

 リッチメディア広告は、認知型広告と言えるだろう。ネット市場全体の10%がリッチメディア広告と言われている。日本でも認知広告として流行っている。リッチメディア広告とは表現力の優れた広告フォーマットのことで、映像や音声で表現されていたりするので、従来のネット広告に比べると強い印象を与えることができる。加えて広告認知率は極めて高いことが想像される。種類としては、フローティング広告、エキスパンドバナー広告、フルスクリーン広告、ストリーミング広告、フラッシュビデオ広告がある。

<PPL>

 これも新しい広告手法として、プロダクト・プレイスメント(PPL)というものがあるが、これは、インターネットのテレビ番組や映画、ゲームなどの中に、広告主の商品やブランドロゴを意図的に露出させる広告手法のことである。韓国の事例を見てみると、現在上映中のインターネットドラマ「新入社員」では、新規ビジネスを立ち上げようとする登場人物が資金繰りのため、「Happy Credit」というクレジット会社を訪れる。また、ドラマ「天国の階段」では、主人公がポルシェに乗っているシーンがでてくるが、いずれも企業が広告費を支払っているのである。
 PPLの流れとしては92年SUMSUNGが映画「結婚映画」に家電製品を提供、代わりに映画のチケットを5万券買って、自社製品を映画の中で宣伝させたのが始まりである。
 その後、98年映画「シュリ」のラストシーンでは、携帯電話で留守番電話を聞くというシーンをSKテレコムが協賛した。この映画の影響でSKテレコムの加入者が急増し、PPLの流行に火がついたのである。そのあとユニテルというプロバイダーが「接続」という映画の中でサービスの告知をしたり、現代という大手車メーカーがガソリンスタンドのシーンでバックに現代の大きな看板を掲示していたりなど、PPLの利用得意先は増加している。
 韓国では2004年時点でPPL市場規模100億円前後である。現在このPPLは映画・ドラマからオンラインゲームPPLまで拡大している。オンラインゲームのプレイ時間は、20%程度の増加を見せ、その影響でテレビの視聴率が微減しているほどであるから、PPLがオンラインゲーム内でも使用されれば、飛躍的に成長するだろう。韓国ではますます成長していくであろうが、日本においても新しい広告手法として、興味深い事例である。

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※講演内容は、「NEWSLETTERvol.15」に掲載しています